ドラッグストアなどで売っているトイレ用酸性洗剤や塩素系漂白剤には、「まぜるな危険!」と表示ラベルに書いてあります。皆さんも見たことがあると思います。では、何と何を混ぜると危険なのでしょうか?
トイレ用洗剤には、強力な酸である塩酸(HCl)が含まれています。塩酸は塩化水素の代表的な酸の一つです。強い酸性で、多くの金属と化学反応を起こして水素(H2)を発生させます。トイレの主な汚れである尿石や水あかは、カルシウム成分で構成されたアルカリ性のため、酸性の洗剤が有効とされています。
一方、塩素系漂白剤には、酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が入っています。これらを混ぜると、「NaClO+2HCl→NaCl+H₂O+Cl₂」という反応進行をし、塩素ガス(Cl₂)が発生してしまいます。このため、トイレ用洗剤と塩素系漂白剤は混ぜてはいけないのです。
ではなぜ、塩素ガスは危険なのでしょうか? 塩素ガスは刺激臭があり、吸ったり触れたりしてしまうと、目や鼻、喉に強い刺激を感じ、呼吸器や目、口腔内の組織が破壊されてしまい、塩素ガス中毒に陥ってしまう場合があるからです。さらに、ガスが肺の奥まで侵入してしまうと肺水腫(肺に水がたまった状態)を起こし、死んでしまうこともあるのです。
塩素系漂白剤は、酸であればどのようなものでも混ぜると塩素が発生してしまいます。たとえば、最近「ナチュラルクリーニング」といってクエン酸やお酢での掃除が流行していますが、これらも酸なので絶対混ぜないようにしてください。
ちなみに、固形粉末のクエン酸やお酢、クエン酸が含まれている果物(レモン、キウイ、グレープフルーツなど)や食器用の酸性洗剤には、「まぜるな危険!」との表記がありません。表記がないから安心とは思わず、必ず使用洗剤の成分を確認し、混ぜないようにしてください。
では、日常生活ではどのような場合で 、塩素発生が起きるのでしょうか? 塩素系漂白剤を使った洗濯液を風呂場のシンクに流し、次に台所で野菜を酢漬けした漬け汁をシンクに流したとします。そうすると、塩素系漂白剤と酢漬け液の酸が排水溝で混じり、塩素ガスが発生してしまいます。また、レモン味の飴やガムを食べながら塩素系漂白剤を使っても、塩素ガスが発生するので注意しましょう。
もしも塩素ガスを発生させてしまったら、まず換気をし、すぐに立ち上がってその場から離れるようにしてください。塩素ガスは酸素より重いので床の方からたまっていくためです。
このように、家にある洗剤類を使用するときには、ラベル表記の成分を必ず確認してから使う習慣をつけましょう。
物質の性質や状態が酸性、中性、アルカリ性かを調べる薬です。主な指示薬として、赤が強ければ「酸性」で青が強ければ「アルカリ性」に変わる「リトマス紙」のほか、アルカリ性の水溶液に反応する「フェノールフタレイン(溶)液」などがあります。なお、指示薬の変色が観察されるpH(水素イオン指数)の範囲のことを「変色域」といいます。
(文/日本サーモスタット株式会社 下田大助)