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(理科コラム13)光の不思議(2) 偏光って何?

2022.07.01

夏の海水浴場や冬のスキ-場では、サングラスをかけている人がたくさんいます。その中に偏光へんこうサングラスというのがありますが、これは運転中のまぶしさを軽減する目的で使われることもあります。偏光グラスかどうかは、頭をいろいろに傾けて空や水面、雪面等を見たとき、明るさが変わるどうかで分かります。

このように、偏光は特別な現象ではなく、太陽光が空で散乱するときや、海面・雪面で反射するとき、夜間の濡れた道路に街の明かりが反射するとき等私たちの身近な所で起きています。しかし、自然の中で起きる偏光はやや複雑なので、偏光板を用いて単純化した実験で説明しましょう。

光の正体が何かという話は突き詰めるととても難しく、次回も引き続き取り上げますが、今回は光は電波の仲間で、その進行方向と垂直な方向に振動する波(電磁波でんじは)が伝わるのだと考えましょう。進行方向に垂直といっても、いろいろな方向があるので、普通の光(自然光)はいろいろな方向に振動している光がまざっていると考えることができます。偏光板は、このいろいろな光の中から特別の方向に振動している光だけを通す働きをします。このような光を偏光、または偏った光といいます。

図1は偏光板の働きの模式図です。図1の偏光板aを通った光が偏っていることは、図2のように方向がaと垂直な偏光板bを置いたときに、光が通らないことから確かめることができます。なお図2の偏光板の角度を少しずつ回転させていくと、だんだん光が通るようになり、a、b2枚の偏光板の方向が一致したときには、1枚のときと同じだけの光が通るようになります。

ここまでで、偏光の説明はひと通り済んだのですが、もう少し実験を進めてみましょう。図2のaとbの間に第3の偏光板cを、a、bそれぞれに対して45°の角度になるよう斜めに入れてみます(図3)。すると、不思議なことに今まで2枚で光を通さなかったものが、今度は3枚でも光を通すようになります。この結果は、それぞれの偏光板が光の一部を順々にカットしていくという単純な発想ではうまく説明できません。

私たちは、いくつかの数のかけ算をするときには、その順序を変えても答えが変わらないことを知っています。つまり普通の数については、a×b×c=a×c×b等の関係が成り立ちます。一方、図3の実験で偏光板の順序をabcの順に変えて光を通すと、光はaとbを通過した段階で全てカットされてしまうので光は通りません。このように偏光板の実験は、数のかけ算とは異なり、abcの順で光を通すことと、acbの順で光を通すこととは違った結果を生むのです。偏光という現象は、光の持つ不思議な性質の一部をかいま見せてくれます。

《キーワード》電磁波
電気と磁気の法則を整理したイギリスの物理学者マックスウェルは、1864年に真空中を光の速さで伝わる電磁波の存在を予言し、光が電磁波の一種であると主張しました。その24年後の1888年には、電磁波が実際に存在することがハインリヒ・ルドルフ・ヘルツによる実験で確かめられました。

(文/子ども総合科学館 成島晋也

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