およそ2万年前の地球はとても寒く、ヨーロッパのイギリスやフランス、ユーラシア大陸、北アメリカは山間部は氷河で覆われていました。私たちが住んでいる関東地方は現在より平均気温が7度ほど低く(氷期)、当時の宇都宮市の気温は、現在の日光市中禅寺湖畔(標高約1,300m)付近の気温とほぼ同じだったと考えられます。海は凍って海水面が低下し、日本列島と大陸がつながっていたため、大陸にいたナウマンゾウやオオツノジカなどの大型生物も栃木県周辺まで来ることができました。小山市でナウマンゾウの歯の化石が発見されていることが何よりの証拠です。
1万9千年前頃になると寒冷期が終わり、地球の平均気温は現代よりも約2度高くなったため、北半球では氷河や氷床が溶け、各地の海岸線で海水面が上昇しました。約7千年前は、現在の海水面と比較すると約2〜3m高かったと考えられます。茨城県の霞ヶ浦周辺や千葉県九十九里浜だけでなく、東京駅周辺や埼玉県さいたま市旧浦和地区、越谷市周辺でも河川や低地に海水が流れ込み、かなり内陸まで海が押し寄せていました。
2021年11月、各国のリーダーがイギリス・グラスゴーに集まり、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が開催されました。この会議では、石炭の使用をめぐって議論を重ね、世界の平均気温の上昇を産業革命以前から1.5度に抑える努力をし、石炭火力発電を「段階的削減」することなどを合意した「グラスゴー気候協定」を採択しました。
1.5度は非常に小さな数値にみえますが、地球にとってはギリギリの数字なのかもしれません。現在、世界的規模で平均気温が上昇し続け、その影響でこれまで経験したことのないような豪雨や嵐による災害、異常気象による農作物などへの被害が発生しているのはご存じの通りです。
環境を見守るために世界中で調査や監視が行われています。エジプト、メソポタミア、インダス、中国といった世界四大文明の遺跡が世界中で調査されていますが、日本でも栃木県で同様な調査が行われています。現在では、世界中のデータを使って、過去の自然環境を調べることができるようになりました。
地球はこれまで、寒冷期と温暖期(氷期―間氷期)を繰り返してきました。この原因として、地球が受け取る太陽エネルギー量(日射量)の変動が考えられています。ちなみに現在は、約1万1,700万年前から始まった間氷期にあたります。
(文/下野市教育委員会文化財課 山口 耕一)