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(理科コラム4)買ったときには鉄のフライパンは既にさびている!ってどういうこと?

2022.02.25

皆さんは自転車のハンドルやフレーム、チェーンの表面にさびが付いているのを見たことがあると思います。これらの材質は鋼鉄こうてつであり、鉄との合金として「スチール」とも呼ばれています。ではなぜ鉄などの素材はさびるのか、その原因について考えてみましょう。

自転車のフレームのさび

鉄(Fe)は3種類のさびに分類されます。鉄がさびた物質は「酸化鉄」といい、酸素が反応することでそれぞれ「FeO」(酸化鉄(Ⅱ))、「Fe₃O₄」(酸化鉄(Ⅱ、Ⅲ))、「Fe₂O₃」(酸化鉄(Ⅲ))ができ、性質も異なります。

FeOは「酸化鉄(Ⅱ)」と呼ばれ黒色粉末で、化粧品などに使われ、天然には存在しません。Fe₃O₄は「四酸化三鉄」または「酸化鉄(Ⅱ、Ⅲ)」とも呼ばれ、見た目が黒いので「黒さび」と呼ばれます。表面を酸化させて黒さびで覆い、内部が腐って形が崩れるのを防ぐ「酸化膜さんかまく」をつくります。例えば、フライパンはあえて黒くなるまで空焼きし、酸化させ黒さびで覆います。これをすることで、表面を黒さびで硬くし、さびが内部に広がることなく鉄の表面を保護します。このようなさびのことを「不動態」といいます。四酸化三鉄は一般に自然発生することはなく、鉄の表面を高温で熱したときに発生します。

空焼きしフライパンに黒さびを付けている

Fe₂O₃は「酸化鉄(Ⅲ)」と呼ばれ、見た目が赤いので「赤さび」と呼ばれます。赤さびは鉄の表面をもろくさせるので、どんどん広がると最終的には鉄がボロボロになって朽ちてしまいます。

さびは水と酸素によって鉄が酸化することで起きます。鉄表面が水で覆われると鉄イオンが酸素と水に反応し、自転車のハンドルやフレーム、チェーン表面の赤さびとなるのです。

ところで、1円玉はアルミニウム(Al)でできているのですが、さびると思いますか? 答えは「イエス」。1円玉はさびます。アルミニウムは空気中で酸素と反応し、表面に酸化被膜をつくります。この酸化被膜は「酸化アルミニウム(Al₂O₃)」であり、1円玉のさびです。しかし、このおかげで内部が保護され、腐りにくい(耐食性が高い)のです。1円玉はさびますが、耐食性が高いといえます。

酸化前(左)と酸化後(右)の1円玉

一方、10円玉は銅(Cu)でできており、酸化すると「緑青ろくしょう」と呼ばれるさびが発生します。緑青とは、酸素や二酸化炭素および水分に長く触れていると発生し、硬貨の表面を覆います。緑青は「塩基性炭酸銅(CuCO₃・Cu(OH)₂)」と呼ばれ、銅の表面を覆う膜となり、内部の腐食を防ぐ働きがあります。そのおかげで、はるか昔につくられた銅像や大仏などは、長期間その形を保つことができているのです。

酸化前(左)と酸化後(右)の10円玉

このように、金属材料は酸素を取り入れることでさびが発生しています。さびをうまく活用した金属やさびが厄介な金属なども存在しますので、身近な金属をぜひ観察してみてください。

《キーワード》酸化
物質が酸素と結びつく化学変化。マグネシウムや木炭など激しく熱や光を出しながら、物質が酸化する化学変化を「燃焼」といい、鉄くぎなど空気中に放置してできたさびは、鉄と空気中の酸素がゆっくりと結び付いてできたもので、「おだやかな酸化」と言います。

(文/日本サーモスタット株式会社 下田大助

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