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(理科コラム5)動植物に残る放射性物質「炭素14」から時代が分かる?

2022.03.18

学校で勉強する教科、例えば理科と社会は、それぞれほとんど関係がない内容のように思えます。ところが、全ての学習は必ずどこかで関係があります。その一つが、古い時代の歴史を探る考古学と物理学にあります。

ヒトの生活した痕跡こんせき(遺跡)を探す発掘調査は、地面を掘り進めることから始まります。地層の重なりの中で下の層から出てくるものが古く、上の層から出てくるものが新しいという決まりから、モノの新旧が決められます。しかし、先ほど述べた地層を見ただけでは、年代を示す根拠を見つけることはできません。そこで登場するのが、「炭素(C)14」という放射性物質に着目した「放射性炭素年代測定法」です。

大気中にある炭素14を動植物が取り込むサイクル

この測定法は1947年、米国・シカゴ大学のウィラード・リビー教授によって発見された方法で、この功績から1960年ノーベル化学賞受賞者となりました。そもそも、地球上の自然圏内に存在する物質は、私たちの身体も含めて全て原子でできています。多くの原子は安定した状態を保っていますが、一部の原子は不安定な状態になることもあり、余分なエネルギーを外に出して安定した原子に変わろうとします。この時に出るエネルギーが「放射線」です。

炭素14はごくわずかですが、大昔から空気中にほぼ一定の割合で含まれていて、動植物は食物を取ったり呼吸したりすることで、空気中の炭素14を体内に取り込んでいます。そして、動植物が死ぬ(枯れる)と炭素14は取り込めなくなり、体内に残った炭素14が放射線を出して少しずつ減っていきます。炭素14の場合、5,730年かけてその数が半分に減っていきます(これを「半減期はんげんき」と言います)。そこから、自然にある炭素14の割合と動植物の体内に残っている炭素14の割合を調べると、どれくらい前に寿命を迎えたかが分かるのです。

放射性物質の半減期

しかし、遺体(骨・灰)などは、発掘調査では毎回出土するとは限りません。そのため、土器の表面の焦げた跡やたき火などで確認される炭を利用することがあります。特に土器の焦げた痕跡は、当時その土器を使ったことを示すことから、その土器の年代を示し、縄文・弥生時代の資料の年代特定に有効な方法と考えられています。

しかし、時代や地域差、保存状況などによって誤差が生じることがあります。その誤差は数30~50年単位など、100年以下の単位での精度となっている例が多く、数千年から数百年単位の年代で考える旧石器・縄文時代などの年代測定では有効です。しかし古墳時代以降、短い時間幅で文化が変化する時代においては、土器の形などモノの形の変化から年代の移り変わりなどを探る研究方法や文字資料による年代の特定の方が有効な手段となっています。

《キーワード》「同位元素」
原子は「電子」「陽子」「中性子」で成り立っていて、同一の原子(元素)なら電子と陽子の数は同数ですが、中性子の数が異なることがあります。この中性子の数が異なる原子を「同位元素」といいます。地球環境問題で「カーボンニュートラル」として話題となっている炭素には、炭素12・炭素13・炭素14という3種類の同位元素があることが分かっています。

(文/下野市教育委員会文化財課 山口 耕一

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