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(理科コラム8)遺伝子で全ては決まらない。運動や学習の能力は努力や環境で変えられる

2022.04.23

人間に限らず生物の体はさまざまな種類の細胞からできています。私たち人間の細胞は約250種類、総計で約60兆個あります。それらの細胞は日々分裂を繰り返し、毎日1兆個が新しい細胞に入れ替わります。細胞の種類によって分裂のペースは違います。例えば、胃の粘膜は約3日、皮膚は約1カ月で全く新しい細胞に入れ替わります。そういう意味で、昨日の自分と今日の自分は全く同じではないといえるでしょう。

一つの細胞が二つに分かれることを「細胞分裂」と呼びます。その様子は顕微鏡を用いれば、タマネギやソラマメの根の先端近くの部分(成長点)で観察することができます。分裂期の細胞の核には、ひものような形をした染色体を確認することができます。染色体には生物の設計図である遺伝子が含まれており、遺伝子の本体はDNA(デオキシリボ核酸)という物質です。

細胞分裂

染色体と遺伝子、DNAの関係はちょっと分かりにくいので、次のように考えてみましょう。忘れ物をしないためにメモ帳に「宿題をする」と書き込むとします。その場合、メモ帳が染色体、メモ帳に書き込む「宿題をする」という内容が遺伝子、「宿題をする」と書く文字がDNAにあたります。それぞれの生物は、遺伝子が親から子へ伝えられることで、親の体の特徴や性質(形質といいます)が代々引き継がれます。

染色体の数は生物によって異なっており、タマネギは16本です。人間は46本、ネコは38本、犬は78本ですが、必ず複数で対(つい)となっています。人間の場合、46本の染色体は父親から受け継ぐものと母親から受け継ぐものがペアとなっているため23対で、そのうち22対(44本)は常染色体、1対(2本)は生物学的な性を決定する性染色体です。母親(女性)はX染色体を2本持ち、父親(男性)はXとYの染色体を1本ずつ持ちます。母親からはX染色体だけを受け継ぎますが、父親からX染色体を受け継げばXX染色体となって女の子に、Y染色体を受け継げばXY染色体となって男の子が生まれます。

性染色体の模式図

私たちはさまざまな形質を両親から受け継いでいます。肌の色や髪の毛の色など、生まれたときから遺伝で決まっている部分もありますが、運動能力や学習能力、性格など多くの部分は努力や環境次第で大きく変えることができることも知っておいてください。

《キーワード》身近になったDNA
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な拡大)により、ニュースなどでDNAという用語を耳にする機会が増えました。新型コロナウイルスの診断に用いられるPCR検査はウイルスのDNAを検出します。新しく登場したコロナワクチン(予防接種)もDNAワクチンと呼ばれるものがあり、ウイルスの遺伝情報を元にワクチンが作られているのです。

(文/さくら市岡医院 岡 一雄

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