細菌とウイルスの違いとは?
皆さんは、「新型コロナウイルス感染症」の流行で、学校が休校になったり、部活動が思うようにできなかったりとつらい思いをしているのではないでしょうか。今回は少し専門的な話になりますが、感染症について勉強しましょう。
感染症は、病原体となる細菌やウイルス、真菌(かび)などの微生物が人の体に侵入することで起きる病気で、昔は人類にとって最も重要かつ人の寿命を決定する病気でした。世の中には数多くの細菌やウイルスが存在し、その一部は人類に害をなしますが、中には納豆を作る納豆菌やヨーグルトをつくる乳酸菌、生物の進化に関係するウイルスなど役に立つ微生物もたくさんあります。
同じような病気を起こしますが、細菌とウイルスは全く違う微生物です。一般に生物は多くの細胞からなり、細胞の核の中には遺伝情報(DNA)が保存されています。細菌やウイルスは単体で存在します。細菌は細胞核を持ちませんが、遺伝情報は細胞内にあり、タンパク質の合成を行うリボソームを持っています。一方ウイルスは、細胞膜すら持たず、タンパク質の殻で包まれた遺伝情報が被膜でおおわれているだけです。細菌は栄養があれば自ら成長し増えることができますが、ウイルスは他の生物の体内でないと増えることはできません。そのため、ウイルスが生物なのか、無生物なのか意見が分かれています。
病原体と戦う細胞
病原体がヒトの体に侵入した時、体の中ではどんなことが起きるでしょうか? ヒトの体には自分を守る「免疫」という仕組みがあります。侵入直後は、マクロファージ(食べることによって細菌などを取り除く)や好中球などの細胞が病原体を発見したり、攻撃したりする役割を分担して侵入した病原体と戦います。これを「自然免疫」と呼びます。
数日後、侵入した病原体の情報はTリンパ球に伝わり、それを受けてBリンパ球が抗体という特注の武器を作成し戦いに投入します。抗体は強力な武器ですが、作られるのに時間がかかるという欠点があります。そのため、一度戦った病原体の情報は記憶され、将来再び攻撃を受けた時にすぐに作れるようになっています。この仕組みを「獲得免疫」と呼び、これを応用して作られるのがワクチン(予防接種)です。ワクチンを打つことで、その病気に対する抗体をあらかじめ作っておき、いざ病原体が侵入してきた時、すぐに抗体が働いて病気にかかりにくくしているのです。感染症の種類によっては一度かかると二度とかからないものもありますが、これも同じ理屈です。
理科の実験で皆さんが使用した顕微鏡は「光学顕微鏡」と呼ばれ、だいたい0.5μm(ルビ:マイクロメートル)(1μmは1/1000mm)くらいの大きさのものまで観察することができます。種類により異なりますが細菌の大きさは小さいもので1μmくらいなので、光学顕微鏡で見ることができるのです。一方、ウイルスの大きさは平均的なもので0.1μmと小さいため、光学顕微鏡で観察することはできません。そのため電子顕微鏡が開発されました。電子顕微鏡は光学顕微鏡の1000倍ほどの分解能を持つため、ウイルスを観察することができるのです。
(文/さくら市岡医院 岡 一雄)