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(理科コラム7)宇宙に果てはあるの?

2022.04.15

「宇宙に果てはある?」「宇宙の外側はどうなっているの?」「宇宙の中心はどこ?」。大昔から人類は、このような疑問をずっと持ち続けてきました。宇宙に興味がある皆さんの中には、「宇宙は138億年前にビッグバンで生まれて、それ以来膨張を続けているって本に書いてあったよ。だから宇宙には大きさがあって、宇宙の果てが広がっていく方向が宇宙の外側なんだよね。どこかを中心に広がっていて、そこが宇宙の中心なんだろうな・・・」こんな風に考えている人も多いのではないでしょうか? しかし、ここで一度いろいろな先入観を忘れて、数学に出てくる簡単な図形から宇宙のことを詳しく調べてみましょう。

まず1次元。つまり、長さの世界を考えてみましょう。線分には決まった有限の長さがあり、端や中心があります。一方、両側にどこまでも伸びる直線には、端も中心もありません。そうすると、長さが有限の図形には必ず端や中心があって、端や中心がないのは長さが無限だからと考えたくなります。しかし、円周には決まった有限の長さがあるにもかかわらず、端も中心もありませんね。この場合は長さの世界、つまり円周上だけを考えることが大切です。

同じことが2次元、つまり面積の世界でもいえます。球面は決まった面積を持っていますが、球面上のどこにも端や中心などの特別な点はなく、すべての点が平等ですね。こう見てくると、私たちの住んでいる縦・横・高さのある3次元の宇宙で考えても、宇宙が有限の広さを持つか無限に広いかということと、宇宙に果てや中心など特別な場所があるかということは別の話だということが分かります。また、真っすぐな線や平らな面だけを考えるのではなく、曲がっている可能性を考えることが大切だということも分かります。ただ、曲がった3次元の空間は、絵に描いたり想像したりするのは難しいですね。

現代の天文学者は、最先端の観測機器を用いて宇宙空間の曲がり方を調べており、宇宙がほとんど曲がっていないことまでは分かっていますが、宇宙が有限か無限かの決定的な証拠は見つかっていません。しかし、そのこととは関係なく、宇宙に端や中心などの特別な場所はないと考えられています。宇宙の膨張も、どこが中心ということはなく、全体が同じように広がっているのです。

《キーワード》宇宙の膨張
1920年代に、ルメートルやハッブルなどの天文学者によって、遠くの銀河ほど大きい速度で遠ざかっていることが発見されました。この比例関係は、一見われわれが宇宙の中心にいるようにも感じられますが、実際にはむしろ宇宙が全体として均一に膨張していることを示しています。

(文/子ども総合科学館 成島晋也

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